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はい、承知いたしました。sd-scripts リポジトリに含まれる sdxl_train_network.py を使用した SDXL LoRA 学習に関するドキュメントを作成します。how_to_use_train_network.md との差分を中心に、初心者ユーザー向けに解説します。
SDXL LoRA学習スクリプト sdxl_train_network.py の使い方
このドキュメントでは、sd-scripts リポジトリに含まれる sdxl_train_network.py を使用して、SDXL (Stable Diffusion XL) モデルに対する LoRA (Low-Rank Adaptation) モデルを学習する基本的な手順について解説します。
1. はじめに
sdxl_train_network.py は、SDXL モデルに対して LoRA などの追加ネットワークを学習させるためのスクリプトです。基本的な使い方は train_network.py (LoRA学習スクリプト train_network.py の使い方 参照) と共通ですが、SDXL モデル特有の設定が必要となります。
このガイドでは、SDXL LoRA 学習に焦点を当て、train_network.py との主な違いや SDXL 特有の設定項目を中心に説明します。
前提条件:
sd-scriptsリポジトリのクローンと Python 環境のセットアップが完了していること。- 学習用データセットの準備が完了していること。(データセットの準備についてはデータセット準備ガイドを参照してください)
- LoRA学習スクリプト
train_network.pyの使い方 を一読していること。
2. 準備
学習を開始する前に、以下のファイルが必要です。
- 学習スクリプト:
sdxl_train_network.py - データセット定義ファイル (.toml): 学習データセットの設定を記述した TOML 形式のファイル。
データセット定義ファイルについて
データセット定義ファイル (.toml) の基本的な書き方は train_network.py と共通です。データセット設定ガイド および LoRA学習スクリプト train_network.py の使い方 を参照してください。
SDXL では、高解像度のデータセットや、アスペクト比バケツ機能 (enable_bucket = true) の利用が一般的です。
ここでは、例として my_sdxl_dataset_config.toml という名前のファイルを使用することにします。
3. 学習の実行
学習は、ターミナルから sdxl_train_network.py を実行することで開始します。
以下に、SDXL LoRA 学習における基本的なコマンドライン実行例を示します。
accelerate launch --num_cpu_threads_per_process 1 sdxl_train_network.py
--pretrained_model_name_or_path="<SDXLベースモデルのパス>"
--dataset_config="my_sdxl_dataset_config.toml"
--output_dir="<学習結果の出力先ディレクトリ>"
--output_name="my_sdxl_lora"
--save_model_as=safetensors
--network_module=networks.lora
--network_dim=32
--network_alpha=16
--learning_rate=1e-4
--unet_lr=1e-4
--text_encoder_lr1=1e-5
--text_encoder_lr2=1e-5
--optimizer_type="AdamW8bit"
--lr_scheduler="constant"
--max_train_epochs=10
--save_every_n_epochs=1
--mixed_precision="bf16"
--gradient_checkpointing
--cache_text_encoder_outputs
--cache_latents
train_network.py の実行例と比較すると、以下の点が異なります。
- 実行するスクリプトが
sdxl_train_network.pyになります。 --pretrained_model_name_or_pathには SDXL のベースモデルを指定します。--text_encoder_lrが--text_encoder_lr1と--text_encoder_lr2に分かれています(SDXL は2つの Text Encoder を持つため)。--mixed_precisionはbf16またはfp16が推奨されます。--cache_text_encoder_outputsや--cache_latentsは VRAM 使用量を削減するために推奨されます。
次に、train_network.py との差分となる主要なコマンドライン引数について解説します。共通の引数については、LoRA学習スクリプト train_network.py の使い方 を参照してください。
3.1. 主要なコマンドライン引数(差分)
モデル関連
--pretrained_model_name_or_path="<モデルのパス>"[必須]- 学習のベースとなる SDXL モデルを指定します。Hugging Face Hub のモデル ID (例:
"stabilityai/stable-diffusion-xl-base-1.0") や、ローカルの Diffusers 形式モデルのディレクトリ、.safetensorsファイルのパスを指定できます。
- 学習のベースとなる SDXL モデルを指定します。Hugging Face Hub のモデル ID (例:
--v2,--v_parameterization- これらの引数は SD1.x/2.x 用です。
sdxl_train_network.pyを使用する場合、SDXL モデルであることが前提となるため、通常は指定する必要はありません。
- これらの引数は SD1.x/2.x 用です。
データセット関連
--dataset_config="<設定ファイルのパス>"train_network.pyと共通です。- SDXL では高解像度データやバケツ機能 (
.tomlでenable_bucket = trueを指定) の利用が一般的です。
出力・保存関連
train_network.pyと共通です。
LoRA パラメータ
train_network.pyと共通です。
学習パラメータ
--learning_rate=1e-4- 全体の学習率。
unet_lr,text_encoder_lr1,text_encoder_lr2が指定されない場合のデフォルト値となります。
- 全体の学習率。
--unet_lr=1e-4- U-Net 部分の LoRA モジュールに対する学習率。指定しない場合は
--learning_rateの値が使用されます。
- U-Net 部分の LoRA モジュールに対する学習率。指定しない場合は
--text_encoder_lr1=1e-5- Text Encoder 1 (OpenCLIP ViT-G/14) の LoRA モジュールに対する学習率。指定しない場合は
--learning_rateの値が使用されます。U-Net より小さめの値が推奨されます。
- Text Encoder 1 (OpenCLIP ViT-G/14) の LoRA モジュールに対する学習率。指定しない場合は
--text_encoder_lr2=1e-5- Text Encoder 2 (CLIP ViT-L/14) の LoRA モジュールに対する学習率。指定しない場合は
--learning_rateの値が使用されます。U-Net より小さめの値が推奨されます。
- Text Encoder 2 (CLIP ViT-L/14) の LoRA モジュールに対する学習率。指定しない場合は
--optimizer_type="AdamW8bit"train_network.pyと共通です。
--lr_scheduler="constant"train_network.pyと共通です。
--lr_warmup_stepstrain_network.pyと共通です。
--max_train_steps,--max_train_epochstrain_network.pyと共通です。
--mixed_precision="bf16"- 混合精度学習の設定。SDXL では
bf16またはfp16の使用が推奨されます。GPU が対応している方を選択してください。VRAM 使用量を削減し、学習速度を向上させます。
- 混合精度学習の設定。SDXL では
--gradient_accumulation_steps=1train_network.pyと共通です。
--gradient_checkpointingtrain_network.pyと共通です。SDXL はメモリ消費が大きいため、有効にすることが推奨されます。
--cache_latents- VAE の出力をメモリ(または
--cache_latents_to_disk指定時はディスク)にキャッシュします。VAE の計算を省略できるため、VRAM 使用量を削減し、学習を高速化できます。画像に対する Augmentation (--color_aug,--flip_aug,--random_crop等) が無効になります。SDXL 学習では推奨されるオプションです。
- VAE の出力をメモリ(または
--cache_latents_to_disk--cache_latentsと併用し、キャッシュ先をディスクにします。データセットを最初に読み込む際に、VAE の出力をディスクにキャッシュします。二回目以降の学習で VAE の計算を省略できるため、学習データの枚数が多い場合に推奨されます。
--cache_text_encoder_outputs- Text Encoder の出力をメモリ(または
--cache_text_encoder_outputs_to_disk指定時はディスク)にキャッシュします。Text Encoder の計算を省略できるため、VRAM 使用量を削減し、学習を高速化できます。キャプションに対する Augmentation (--shuffle_caption,--caption_dropout_rate等) が無効になります。 - 注意: このオプションを使用する場合、Text Encoder の LoRA モジュールは学習できません (
--network_train_unet_onlyの指定が必須です)。
- Text Encoder の出力をメモリ(または
--cache_text_encoder_outputs_to_disk--cache_text_encoder_outputsと併用し、キャッシュ先をディスクにします。
--no_half_vae- 混合精度 (
fp16/bf16) 使用時でも VAE をfloat32で動作させます。SDXL の VAE はfloat16で不安定になることがあるため、fp16指定時には有効にしてくだ
- 混合精度 (
--clip_skip- SDXL では通常使用しません。指定は不要です。
--fused_backward_pass- 勾配計算とオプティマイザのステップを融合し、VRAM使用量を削減します。SDXLで利用可能です。(現在
Adafactorオプティマイザのみ対応)
- 勾配計算とオプティマイザのステップを融合し、VRAM使用量を削減します。SDXLで利用可能です。(現在
その他
--seed,--logging_dir,--log_prefixなどはtrain_network.pyと共通です。
3.2. 学習の開始
必要な引数を設定し、コマンドを実行すると学習が開始されます。学習の進行状況はコンソールに出力されます。基本的な流れは train_network.py と同じです。
4. 学習済みモデルの利用
学習が完了すると、output_dir で指定したディレクトリに、output_name で指定した名前の LoRA モデルファイル (.safetensors など) が保存されます。
このファイルは、AUTOMATIC1111/stable-diffusion-webui 、ComfyUI などの SDXL に対応した GUI ツールで利用できます。
5. 補足: train_network.py との主な違い
- 対象モデル:
sdxl_train_network.pyは SDXL モデル専用です。 - Text Encoder: SDXL は 2 つの Text Encoder を持つため、学習率の指定 (
--text_encoder_lr1,--text_encoder_lr2) などが異なります。 - キャッシュ機能:
--cache_text_encoder_outputsは SDXL で特に効果が高く、推奨されます。 - 推奨設定: VRAM 使用量が大きいため、
bf16またはfp16の混合精度、gradient_checkpointing、キャッシュ機能 (--cache_latents,--cache_text_encoder_outputs) の利用が推奨されます。fp16指定時は、VAE は--no_half_vaeでfloat32動作を推奨します。
その他の詳細なオプションについては、スクリプトのヘルプ (python sdxl_train_network.py --help) やリポジトリ内の他のドキュメントを参照してください。